家屋の解体・取り壊し工事の費用相場とは?注意すべき3つのポイント
使わなくなった古い家を処分できない空き家は、年々増加しており、今では深刻な社会問題になっています。壊したくても壊せない、あるいはどうしたらいいのかわからないという方も多いのではないでしょうか。
身近に経験した人がいない限り、古い家屋の取り壊しについての話を耳にすることはそう滅多にないでしょう。中には、家屋の解体を依頼できる業者の存在自体を知らないかもしれません。しかし、家屋の解体を取り扱う業者は実際に存在しますし、必要な手続きを経て解体を行うことができます。
ここでは、家屋の解体取り壊し工事についての概要と、相場、依頼する際に注意すべきポイントについてご紹介します。
家屋の解体・取り壊し工事とは
使わなくなった古い家屋を取り壊すには、家屋の解体を取り扱う専門の業者に依頼します。所定の手続きを経た後、解体終了後には建物の滅失登記申請を行い、家屋の解体の一連の流れが完了します。解体前には業者と何度も連絡を取ったり、ごみを処分したりと、何かと面倒なことが多い家屋の解体工事ですが、正しい知識を持って臨めば、解体終了までスムーズに動けますので、参考にしてみてくださいね。
解体工事前に必要な手続き
古い家屋の解体が決まったら、すぐに業者に依頼して解体作業を依頼できる、というわけではありません。家を建てた時と同じように、家を解体する時も必要書類を準備して所定の手続きを行う必要があります。
①解体業者を探す
はじめに、家屋の解体を行う業者を探します。できれば現場から近い業者を選ぶと良いでしょう。業者のある営業所から解体現場までの往復の交通費が発生することを考えて、可能な限り家から近いところを探してみましょう。その中でも、実績があり、尚且つ信頼できる業者を探さなければなりません。
信頼できる業者を選ぶ目安として、解体工事施工技士の有資格者がいることと、各都道府県に解体工事業者登録がされていることの2点があります。無資格あるいは未登録の業者が安く工事を請け負っていることもあるので、依頼する前にホームページ等で確認しておきましょう。なお、延べ床面積80平方メートルの場合、建物リサイクル法に関する届け出を提出している業者にのみ依頼できます。こちらもホームページで確認するか、電話で直接問い合わせてみると良いでしょう。
②必要書類を提出する
業者が行う手続きと、依頼者が行う手続きの2つに分かれます。
<業者が行う手続き>
業者が行う手続きは、工事現場の詳細などが書かれた書類を自治体に提出します。これらは工事に着手する1週間前には提出しなければなりません。業者が行うべき手続きはすべて任せてしまっても問題ありません。見積もりに影響はないものと考えましょう。
<依頼者が行う手続き>
そして、依頼者は解体工事終了後に「建物の滅失登記申請」を行う必要があります。この申請先は地方法務局で、解体終了後1ヶ月以内に必ず行わなければならない手続きです。もしこの手続きを怠り、長期間放置した場合、20万円以下の罰金に処せられることがあります(建物リサイクル法第51条)。実際には、いきなり罰金命令が出るわけではなく、届け出ていないことがわかった後に、行政指導を受け、それでも手続きがされなかった場合に罰金が発生するようです。後述しますが、このような罰金設定してまで厳しく取り締まっているのは、税金の支払いに大きくかかわっているためです。家屋の解体後はすみやかに必要な手続きを行いましょう。
なお、依頼者が行う手続きはこれだけですが、面倒な時は一連の手続きを代行してもらうこともできます。土地家屋調査士に依頼すれば書類の作成代行、登記代行などの面倒な手続きを行ってくれますので、ご活用ください。その際、依頼したことによる手数料が発生するので、予算を抑えたい方はご自分で手続きを行うと良いでしょう。
解体工事費用の見積もりに関わる項目5つ
いわゆる「解体費用」とは、家屋を解体する作業にのみ発生する費用であり、解体のために必要な作業や人件費は含まれていないことが多いです。
家屋の解体工事では、実務上、家屋だけ解体して終了するわけではありません。騒音対策のために養生シートを囲う費用、庭に植えてある樹木を撤去する費用、道路沿いに面した場所なら交通整理員の人件費、工事に使う重機の運搬費用など、解体費用とは別にさまざまな費用が発生します。このように、解体工事費用以外に想定される追加項目についてご説明します。
①人件費
建物ならびに敷地面積が広いと、それなりに人数も必要ですし、日数もかかります。狭ければ安く済むというわけではありませんが、広ければ広いほど人件費の負担も大きくなります。また、道路に面した現場で作業を行う場合、必要に応じて交通整理の人員を確保する必要も出てきます。なお、重機による作業ができれば費用を少しは安く抑えられますが、これが場合、すべて人力での作業となるため、その分費用は割高になります。
②近隣との距離・家屋の大きさ
安全に作業を行うために、養生を行い、足場を設置します。そのための費用も発生します。養生を行うことで、近隣とのトラブルを避ける目的もあります。具体的には、解体した家屋の破片やホコリ、ごみの飛散防止、騒音対策などがあります。特に防音対策は高額になる傾向があります。また、住宅が密集している都市部などでも、養生や足場、騒音、振動対策を徹底して行わなければならないため、相場も高くなります。
③廃棄物の量
家屋の解体により排出されたがれきやごみはすべて産業廃棄物として処分されます。産業廃棄物は一般の家庭ごみとは違い、処分に高額な費用が発生します。そのため、廃棄物の量が少なくなればなるほど、費用も安く抑えられます。なお、家屋の中に残っていた生活用品など、通常の一般ごみで処分できるものも、解体の際には産業廃棄物として扱われてしまうため、解体工事の前に可能な限り自力での処分を行いましょう。
④その他、家屋以外に解体するもの
家屋以外にも、敷地内にブロック塀、庭石、樹木など、追加で撤去するものがあれば、その分費用が加算されます。業者に見積もりを作成するときに、これらの撤去も併せて希望すると伝えると、より正確な見積もりを作成してもらえます。
⑤土中にあるもの
井戸などの地中埋葬物、地中障害物があればこちらも追加料金がかかります。こちらも事前に業者に伝えておきましょう。
解体工事の費用相場
解体工事の費用相場を調べると、安いところでは100万円前後から高額なところでは300万円を超す事例まであり、正しい相場を把握しにくく感じるかもしれません。このような現象が起こるのには理由があります。「解体費用の相場」というのは、「解体費用の合計金額」ではなく、「家屋を解体する費用」しか含まれていないためです。他に付随する費用が案件によって別途発生するため、一軒一軒ごとに金額が異なるのです。同じ地域、同じ面積でも、建物の構造、立地や廃棄物の量などが違うと数十万単位で金額に差が出ることもあります。
正しい相場観を掴むために、解体工事費用の相場と、見積金額が左右されるそれ以外の費用についてご紹介します。おおよその目安として参考にしてみてください。
・解体工事費用 2~7万円
解体工事の費用に含まれるものは、「壊すコスト」と「捨てるコスト」だけで、それ以外の費用は含まれていません。費用は坪単価で算出しますが、家屋の構造によってもその費用が異なります。構造別の1坪当たりの単価は以下の通りです。
木造 25,000~60,000円程度
鉄骨 30,000~65,000円程度
RC 35,000~70,000円程度
一般的に、木造住宅は解体工事がしやすく、費用が安く抑えられます。鉄骨とRCは木造よりはやや高額になりますが、解体により排出された産業廃棄物の中から、リサイクルできる資材があれば、ある程度処分費用を抑えることもできます。
次に、解体費用以外に発生する追加の費用相場の一例を項目別にご紹介します。
・人件費 15,000円程度/人
人数×日数で算出します。作業員、重機オペレーター、交通整備員など、ある程度の人数が予想されます。
・仮設工事 500~1,000円/㎡
騒音対策、ゴミやホコリの拡散防止のために行われる仮設工事です。足場を設置し、建物の周囲を養生シートで囲います。隣家とのスペースに余裕があれば、養生シートは不要となり、その分費用は安く抑えられます。
・内装解体 5,000~10,000円/坪
トイレや風呂などの生活用の設備、石膏ボードなどの撤去は重機ではなく、人力で作業を行うため、その分1坪当たりの単価が高くなります。
・屋根解体 1,000~2,000円/坪
屋根瓦の撤去も手作業です。産業廃棄物扱いになり、瓦の種類によって処分費用も異なります。
・樹木の撤去 10,000~50,000円/本
樹木の大きさや幹の太さによって変動します。
・その他の付帯物の撤去 20,000円程度~
車庫や門など、家屋に付随する付帯物がある場合にかかる費用で、個別に計上されます。付帯物の大きさによって異なるので、相場の開きが大きくなります。
・重機運搬費用 40,000円程度
仮設工事や内装解体が終わった後に、重機による作業が行われます。外装の一部が解体され、敷地内に重機を置くスペースが確保されれば、重機の保管が可能になるため、運搬は導入初日と工事完了日のみで、1往復が基本です。
費用を安くするために注意すべき3つのポイント
家屋の解体にかかる費用は、業者の見積もりを鵜呑みせず、自力でできることは自力で作業をすすめていき、できるだけ業者の負担を減らすことで費用を抑えられますし、節税対策を行うことで支出をできるだけ抑えることができます。その一例をご紹介します。
(1)残置物は自分で処分しよう
居宅内に残っている残置物の処分も、業者に依頼することができますが、料金を抑えたい場合は、家具や家電、荷物などは極力自分で処分するようにしましょう。解体により発生した廃棄物の量が少なくなり、処分量が軽減され、その分費用を抑えられます。また、通常なら家庭ごみとして処分できるものが残置物として家屋内に残っていると、解体時にそれらも産業廃棄物扱いになるため、通常の処分費用よりさらに上乗せされて費用が発生します。とてももったいないことですので、できるだけ自力での処分をおすすめします。なお、絵画や古物、美術品など金銭的に価値のある残置物がある場合、買い取ってくれる業者もあるので、そちらもぜひ活用してみてください。
(2)解体業者への依頼は自分で行う
家屋の解体を依頼するケースは主に次の3つが考えられます。
①住宅を新築するため
②使わなくなった家屋を取り壊し、土地を売却する
③駐車場として利用する
この中で特に多いのは①の新築です。この場合、依頼主は、現在残っている古い家を壊して新しい家を建てるため、たいていはハウスメーカーに工事を依頼します。そして、メーカー側は依頼者の希望に応じて見積額を提示してくれますが、この見積には解体費用が含まれています。
「建設業者だけでなく解体業者まで手配してくれて、費用も住宅ローンとまとめて支払いできるのだから、ありがたい話では?」と思われがちですが、実際にはそうではありません。ハウスメーカーが提示している見積もりには、解体業者と建築業者も含まれています。ハウスメーカーを通すことで二重に中間マージンが発生するため、その分費用が高額になるのです。解体業者を自分で決めて依頼すれば、このようなマージンは発生しませんから、他解体業者と建築業者を別々に発注する分離発注をおすすめします。
(3)解体後は土地活用で節税対策を行う
解体工事後、更地になった家屋をどのように活用するか決まっていますか?所有する土地には固定資産税が発生しますが、住宅用地に対しては1/6~1/3の軽減が認められる特例があります。そのため、解体作業を行った後の土地が更地になった場合、住宅用地とは認められず特例を受けられなくなり、固定資産税がそれまでよりも高額になります。そうなると「家を解体すると固定資産税が高くなってしまう」と思われがちですが、正しくは「家が建っていたから固定資産税が安くなっていた」ことになります。更地にすることで固定資産税の額が特例措置を受ける前の金額に戻るのです。
ただし、1月1日の地点の土地の状態で固定資産税の額が決定するので、解体工事終了後、次の1月1日までに住宅を建てていれば、税額に変更はありません。なお、更地のままではなく、農地転用や駐車場の経営などを行っている場合は、土地に対する評価が変わるため、固定資産税の金額はそれまでとは変わってきます。ですから、解体終了後は更地のままにせず、売却するか、何らかの形で土地活用を計画することをおすすめします。
まとめ
家屋の取り壊しは、人生でそう滅多にあることではありませんし、工事が完了するまでにはそれなりの労力もかかります。それに、住めなくなってしまったとはいえ、長年使い続けていた家を機械によって強制的に取り壊すことは、それまで過ごしてきた家がなくなってしまうために家族に申し訳ない気持ちになるかもしれません。
しかし、家屋の解体は後ろめたいことばかりではありません。住めなくなった古い家屋を取り壊した後に、新しい家を建て直したり、駐車場などの土地活用に役立てたり、土地を売却して利益を得るともできます。解体作業を行った先に、新たに利用価値のあるものとして生まれ変われることを考えれば、前向きな気持ちで解体を決意できるのではないでしょうか。
なお、ここで紹介した家屋の解体工事について、ご不明な点があればお気軽にお問い合わせください。